住宅メーカーの資産活用セクションというのは、賃貸住宅の市場を活性化する部署です。だから、私たちは年がら年中「新しい賃貸住宅は?もっと魅力ある賃貸は?」と考えているわけです。賃貸住宅の入居者も、現在では多様化しています。昔のように、学生や若い単身者ばかりではありません。シニアの方もいれば、戸建ての借家を希望するファミリー層もいる。いつの間にか、ターゲットは拡大して来ているわけなんです。そうなれば、新しいニーズがそこに生まれて来て当然です。
賃貸住宅は、ご承知のとおり退去する時は原状回復が原則。壁を塗り替えたりすることは、まずできません。入居者が、部屋に合わせなければならない。入居される方が自由に住空間をカスタマイズできないだろうか。賃貸住宅の魅力を高めるために、このハードルをクリアしたかったのです。何かいい方法をと模索していた時に、取引先の事務所でカモ井加工紙さんの「mt」を紹介されました。「あっ、これだ!ここに新しい可能性がある。」と、なぜかインスピレーションがあったのです。手のひらに乗るほどの小さなステーショナリーのマスキングテープが、突破口の一つに見えた。その時は、どうやって使うものなのか見当がついてなかったんですが。(笑)


カモ井加工紙は、1923(大正12)年創業の会社です。ハイトリ紙から始まって、今日まで粘着テープをはじめとするさまざまな製品を開発してきました。塗装用などに使われるマスキングテープは工業用。まさか、このテープにファンがいるなどとは、夢にも思わなかったのです。2006年、東京に暮らす三人の女性から「マスキングテープが大好きで、ミニ本をデザインしました。ぜひ、工場見学がしたいので」というメールをいただいたのが、「mt」誕生のきっかけ。無骨な作業用のテープが、美しくデザインされて本や封筒になっていることに驚かされたのは、私たちのほうです。マスキングテープを楽しむという発想は、ほんとうに「燈台もと暗し」でした。
工場見学に来ていただいたこの女性たちのアドバイスを受けて、20色のカラフルな「mt」がデビューするのは2007年。マスキングテープが、工業用から雑貨やステーショナリーの世界に飛び込んだわけです。それが、すぐに大反響をよび、その年の雑貨オブザイヤー審査員賞(主婦の友社)をいただいたのです。
さっそく「mt」についてあれこれ調べ、カモ井加工紙さんとコンタクトをとり、またびっくり。カモ井加工紙さんは、建築現場でおなじみのシーリングテープのメーカーだったのです。住宅メーカーという職業柄、現場にはカモ井加工紙さんの製品が使われていましたからね。不思議な縁だなぁと、感じました。
「mt」は、すでに熱心なファンを獲得していて、mt ex展なども日本はおろか、海外でも行なわれて大評判を呼んでいる。このX−project に参加していただけるか不安もあったのですが、快く引き受けてくださって。ほんとうに、感謝しています。「mt」を実際に手にとって使ってもらうとわかっていただけると思うのですが、和紙のもつ優しさや半透明感。そして、しっかり貼られているのにはがした時にはあとさえも残さない清潔感。デザイン性の高さも、手づくりのクラフト感も幅広く表現できる応用力の高さ。賃貸住宅のインテリアに使ったらとても面白くなるだろうことは、確信がありました。


「mt」の発売以来、私たちもお会いして話す方々たちがガラリと変わりました。マスキングテープ時代は、なんといっても工場や現場の方達が主流。そもそも、ヘルメットや建築用の安全帯をつけた場所でしか使われなかったんですからね。一般の方には見ることはおろか、立ち入れない場所がマスキングテープの活躍の場でしたから。(笑)
「mt」は、いろいろな方々との出会いを連れて来てくれました。20〜30代の女性たち、アーティスト、ファッションブランド、海外の方達…、いろいろな出会いから新しいことがどんどん生まれて、その度に「こんな使い方こんな楽しみ方があるんだ」と、私たちの方こそ新発見の連続です。今では、「mt」を愛用していただく方は小学生からシニア層まで幅広い、男性のファンの方もたくさんいらっしゃいます。「どんな方がどう使ってもいい」、この自由さと、無限大の使い勝手にどうやら「mt」の魅力があるようです。だから、新しい企業や人からのオファーは大歓迎なのです。出会いのたびに、私たちの方が「mt」の新しい魅力に出会えるのですから。
コラボレーションのX—projectをどこで行なうか、話題を集めるだけならば東京や大都市圏で開催した方がいい。でも、できるなら「mt」の聖地というか(笑)、カモ井加工紙さんの本社がある岡山県でそのスタートを切りたかったのです。ミサワホームは全国展開するナショナルブランド、グループ企業のミサワホーム中国がBelle Lead cassiyaを年明けに建てるという情報を聞き、ここでの開催を思いつきました。ごく一般的な宅地の中に、コラボの会場がある。身近な場所で、実際に春からは入居が予定されている物件でmtによる新しい住まい方を提案できる。偶然とは言え、幸運だなぁと感じています。
一軒の賃貸住宅をまるごと「mt」でデザインする。いままでのmt ex展では見られなかった新しい楽しさと、きっと出会えるはずです。みなさんも、どうぞご期待ください。


廃校跡、海外、ギャラリー、ギフトショー、大型の商業施設…、今まで私たちはさまざまな場所でmt ex展を行なわさせていただきました。その度ごとに、新鮮な驚きを経験させていただいています。今回、ミサワホームさんから一軒の賃貸住宅をぜんぶそのまま「mt」を活用して展示してほしいというお話をいただきました。特別な場所ではなく、そこに誰かが暮らすスペース。身近な場所で「mt」の新しい魅力が表現できるのではないかと、この機会をとても嬉しく感じています。展示する場によって、「mt」の表現もどんどん変わっていきます。今はまだデザインプランと格闘中ですが、楽しい提案をたくさん盛り込めるコラボレーションになることと思っています。住宅を毎日の暮らしを「mt」で、ちょっと楽しく。住宅地にこつ然と現れる「mt」ホームを、たくさんの方にお楽しみいただければ幸いです。








